— トレーナーとして感じてきた「姿勢」と「呼吸」の切っても切れないつながり —
姿勢改善の指導をしていると、ほぼ必ずと言っていいほど共通して見えてくるものがあります。
それは、姿勢が崩れている人は、呼吸も浅くなっているということです。
胸が固く張っている人、反り腰でお腹が前に突き出ている人、猫背で肩が前に巻き込んでいる人──。
体型や悩みは違っても、呼吸をチェックすると「肩が上がる」「息が短い」「吸えても吐けていない」など、共通点が多いのです。
トレーナーとしてこれまで多くのクライアントを見てきましたが、姿勢を改善させるためには筋トレやストレッチだけでは不十分で、呼吸の再学習が欠かせないと確信するようになりました。
実際、呼吸を整えるだけで骨盤の前傾・後傾が改善したり、巻き肩が自然に緩んだり、腹部の緊張が抜けて腰痛が和らぐケースは珍しくありません。
今回は「なぜ呼吸が姿勢に影響するのか?」「具体的に何をすればよいのか?」を、科学的な視点と現場経験の両方から深掘りしていきます。
姿勢と呼吸が直接つながっている理由
1. 呼吸筋の硬さが姿勢を歪ませる
呼吸は肺の出し入れだけではなく、横隔膜・肋間筋・腹筋群・背部の筋群など、多くの筋肉が連動して行う全身運動です。
特に重要なのが横隔膜(おうかくまく)。
横隔膜は胸腔と腹腔を分け、吸う際には下がり、吐く時に戻ることで呼吸をコントロールします。
しかし姿勢が崩れると、この横隔膜の動きが制限されます。
- 猫背 → 肋骨が落ちて横隔膜が常に縮んだ状態
- 反り腰 → リブフレア(肋骨が前に開く現象)が起こり横隔膜が伸ばされすぎる
- 巻き肩 → 肋骨の可動が減り胸郭が硬くなる
結果、呼吸が浅くなる → さらに姿勢が悪化するという悪循環が生まれます。
呼吸筋は姿勢保持筋でもあるため、呼吸が乱れると姿勢の土台そのものが不安定になります。
科学的に見ても、呼吸と姿勢はセットで機能する
1. 呼吸は「体幹の圧」を作る
姿勢を支える上で欠かせないのが腹腔内圧。
横隔膜・腹横筋・多裂筋・骨盤底筋の4つを中心に作られる“内側のコルセット”のような圧です。
科学的にも、腹腔内圧が適切に働くほど腰椎の安定性が上がることが報告されています。
しかし、この腹腔内圧を作る主役こそ呼吸です。
- 横隔膜がしっかり下がる(吸う)
- 腹部が適度に膨らむ
- しっかり吐けることで圧が調整される
これができないと、どれだけ体幹トレーニングをしても「外側」だけ固める状態になり、根本的な姿勢改善につながりません。
トレーナーとして現場で感じてきたこと 💡
姿勢が悪い人の多くは、「筋力不足」だと思い込んでいます。
もちろん筋力は大事ですが、実は僕が多く見てきた改善事例の中で、最初に変えるべきは呼吸というケースが本当に多いです。
反り腰の女性クライアントの場合、腹筋運動をしても腰痛が悪化していたため呼吸をチェックしたところ、吸う方向に偏っており、吐くことが苦手なタイプでした。
そこで「長く吐く」「肋骨をしぼめる」「横隔膜を使う」ことを徹底したところ、数週間で自然と骨盤の前傾が緩み、腰痛も改善。
筋力トレーニングに入ったのはむしろ後でした。
また、巻き肩に悩む男性クライアントも、胸椎が硬く呼吸が浅い典型的なパターン。
背骨ストレッチ+呼吸再学習を先に行うと、肩を引く意識をしなくても胸が自然と開くようになっていきました。
これらの経験から、僕自身の中で「姿勢改善は呼吸教育から始まる」という考えが確立されています。
姿勢改善のための「呼吸の再学習」ステップ
● 0. 背骨(胸椎)をほぐすストレッチを最初に行う
呼吸の再学習をスムーズに進めるためには、まず背骨(特に胸椎)を動きやすくしておくことが欠かせません。
胸郭が固まっていると、横隔膜が十分に動かず「吐く・吸う」の質を高めることが難しくなるため、呼吸練習の前準備として必ず入れています。
🔹おすすめ胸椎ストレッチ
- キャット&カウ
背骨全体を丸める・反らすをゆっくり5〜10回 - フォームローラーでの胸椎伸展
肩甲骨の下あたりにローラーを置き、胸を少し反らせる(痛みの出ない範囲で)
胸椎がある程度動くようになると、背中側の肋骨が広がりやすくなり、後の呼吸ステップの効果が大幅に上がります。
● 1. まずは“吐く”練習
多くの人が吸うことばかり意識していて、吐く力が弱い。
吐くことができないと横隔膜がリセットされず姿勢が崩れます。
- 5〜6秒かけてゆっくり吐く
- 肋骨が内側に締まる感覚を意識
- お腹がぐっと引き締まるのを感じる
特に“肋骨が閉じる”動きは、反り腰・肋骨開きタイプには絶大な効果があります。
● 2. 吸う時は「背中」に入れる
胸だけで吸う癖がある人は、背中側の肋骨が動いていません。
背中に空気が入る感覚をつくると、胸郭が立体的に動くようになり、猫背改善にもつながります。
- 吸う時に肩をすくめない
- 背中の下部まで広がるイメージ
- 横隔膜が下がる感覚をつかむ
● 3. 呼吸しながら体幹を使う練習へ
ある程度呼吸が整ったら、「呼吸+動作」で姿勢を安定させる練習をします。
- レッグレイズ
- ヒップリフト
- クランチ
- スクワットで肋骨と骨盤の位置を保つ(肋骨を上に引き上げた状態)
こうした基礎動作に呼吸を合わせることで、日常動作でも姿勢が崩れにくくなります。
呼吸が整うと姿勢以外にも変化が出る ✨
呼吸が改善すると次のような変化が出ます。
- 肩こり・腰痛の軽減
- 睡眠の質の向上
- 運動時のパフォーマンス向上
- 自律神経の安定
- お腹周りのスタイル改善
横隔膜は各神経とも連動しており、呼吸改善によるストレス軽減は研究でも裏付けられています。
現代人の多くは気づかないうちに呼吸が浅くなっているため、“姿勢×呼吸”の改善は心身の健康に直結すると感じています。
まとめ:姿勢改善は「呼吸の質」から変わる 📌
姿勢改善というと「背筋を伸ばす」「筋トレをする」「ストレッチをする」といった方法が思い浮かびますが、それだけでは不十分です。
姿勢の土台をつくっているのは、筋力以上に 呼吸の質。
- 横隔膜の働き
- 肋骨の可動性
- 腹圧(腹腔内圧)
- 体幹の安定性
これらはすべて呼吸と直結します。
呼吸が整えば姿勢は変わり、姿勢が変われば体の不調も改善していきます。
筋トレやストレッチを頑張っているのに姿勢がなかなか良くならない人ほど、まずは呼吸に目を向けてみてください。
呼吸は癖が強く残る部分ですが、適切な再学習をすれば必ず変わります。


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